REPORT of Shibuya Slow Stream vol.21 勇気と呑気

REPORT of Shibuya Slow Stream vol.21 勇気と呑気

vol.21 勇気と呑気

良い都市とは、どのようなものか。
思い切り吸い込みたくなるような新鮮な空気が流れる。肌あたりの心地よい風が流れる。都市の良い状態というものを、「気の巡りの良さ」とすると、じゃあ、どのような「気」が都市を巡ると良いのか?ということも考えたくなります。たとえば、勇気と呑気。街なかを、そんな気分が巡っていく。そういう理想の持ち方があっても良い気がしてきます。というわけで「勇気と呑気」な、音楽やフードやドリンクや遊びが集まります。子どもも、大人も、ペットも大歓迎。ぜひ、足をお運びください。
なお、わたしたちは、ベビーカーや車椅子でのご来場を大歓迎しています。会場は、渋谷駅直結の渋谷ストリームの広場です。館内には、多目的トイレや喫煙室もあります。大きな声が出たり、泣いたりしても大丈夫。必要なときには助け合いながら、みんなで良い時間をつくれたら最高です。
 

目次

ふりかえりトーク
 

開催概要

2025年3月29日(土)30日(日)12:00-21:00
渋谷ストリーム前 稲荷橋広場
entrance free
 

Live/Dj

 
 
suppa micro panchop
Instagram|@suppamicropanchop
 
pottmann
Instagram|@pottmannn
 
くまちゃんシール
Instagram|@sairipkny
 
Le Makeup
Instagram|@le_makeup___
 
 
ayU tokiO
Instagram|@ayu_to_to
 
ぺのてあ
Instagram|@penotea
 
Mayu Amano
Instagram|@mayuness1
 
RUOH
Instagram|@__ruoh
 
DODDODO×UNBE
Instagram|@_doddodo @_unbe_
 
grrrden
Instagram|@grrrden
 
Yosi Horikawa
 

Care

 
からだの声を聞こう
全体整体 kumo
Instagram|@seitaikumo
*30日のみ
 
占星術と植物療法
GRRRDEN 治癒と創造の庭
Instagram|@grrrden_official
*30日のみ
 

Play/Popup

 
子どもも大人もお気軽真剣DJ体験
おしるこちゃん
Instagram|@0465chan
 
河童
Okk
Instagram|@okk_shookuda
 
政治的衣服
SUPER-KIKI  SHOP
Instagram|@super_kiki_shop
*29日のみ
 
消えるジャグアタトゥー
KISHIN TATTOO
Instagram|@kishin_tattoo
*29日のみ
 
enjoy your charms
33 11
Instagram|@3311_charms
*30日のみ
 
雫を滴してリズムを抽出する楽器
WHR(S)hop
Instagram|@bon_nasama
 
新世代アナログゲーム店
わなげボーボー
Instagram|@wanage_bowbow
 
ヤバい実験室
ReverseMaker Hi-D
Instagram|@hi.d.shima
 
どこでも遊び場に変えるプレイキット
PORTABLE PARK
Instagram|@portable_park
 

Food/Drink

 
パッタイ屋台
Adwee Lalawee 2
Instagram|@adweelalawee2
*29日のみ
 
京風日常料理
ごはんの木
Instagram|@gohan_no_ki1504
*30日のみ
 
世界のクラフトビール
Drinkuppers
Instagram|@drinkuppers
 

Daily practice

 
SSSは、その開催場所である渋谷川のほとりと互恵関係でありたいと考えています。実施を重ねるたびに、その場所も育まれていく。日常の風景にも働きかけていく。そのような願いのもと、Spiral Clubによる「ビオトープづくり」YUMEGIWA&大山龍による「「渋谷川のヌシに捧げるエナジードリンクの研究開発(DAYDREAM FUNCLUB)」などを日常的に展開しています。今回のSSSでも、それらの関連ワークショップ等を実施します。是非、日頃の活動とともにご関心をお寄せくださいますと幸いです。
 
Spiral Club
Instagram|@spiral_club
渋谷川のほとりで、小さなビオトープづくりを進めています。SSSと連携しつつ、日常的なメンテナンスや周辺の生き物等の観察会も行っています(ヘビを発見したり、ビオトープではトンボの赤ちゃんであるヤゴを宿したりもしてきました)。また、気兼ねなく環境課題に関して話をしたり耳を傾けたりすることを大切にする機会も育んでいます。
 
・オープンミーティング
"生活の中で気になった社会や地球にまつわるあれこれ"をその日その場に集まった人たちの関心ベースでおしゃべりします🌀知識の有無は全く問わないので、豊かな地球のこれからを想うどなた様も大歓迎です!
日時:3月29日(土)14:30-15:30
参加方法:当日受付可ですが、事前予約優先となります。参加希望の方はSpiral ClubのInstagramへDMしてください
 
・ビオトープの観察会
暖かくなり、お魚も水草も生き生きしてくる3月下旬。動物にも私たちにも居心地の良い場所ってどんな場所だろう?手を動かしながら渋谷川の豊かな循環についてみんなで考える機会を作ります🌱
日時:3月30日(日)13:00-14:00
参加方法:当日受付可ですが、事前予約優先となります。参加希望の方はSpiral ClubのInstagramへDMしてください
定員:先着10名
 
 
 
YUMEGIWA
“渋谷の川のヌシに捧げる儀式”を通して想像上の生き物に対する感覚を研ぎ澄ませることで、私たちの中に眠っている詩的想像力の喚起を促し、よりよい街のヴィジョンを空想共同していくアートプロジェクト。
 
・映像:地球に片想い?
気候危機、大量絶滅など地球システムの崩壊が感じられる今日において、その状況を生きていくために必要な”絶望に対する処方箋”とは一体どのようなものでしょうか。「地球に片想い?」はさまざまな生き物や風景との絆を再創造していくことを試みるちょっと不思議な映像作品。今回はそのエッセンスを渋谷駅ハチ公側のスクランブル交差点の大型ヴィジョンでON AIR。
期間:3/1〜3/30(予定)
場所:渋谷駅ハチ公側のスクランブル交差点前の大型ヴィジョン(Q'S EYE
 
・音楽:渋谷の川のヌシを呼び覚ますサウンドシステム
さまざまな土地でフィールドレコーディングした自然の音(水や風、虫の声など)を編集して作った、想像上の生き物を召喚するための音楽を”ヌシに捧げるサウンドシステム”で再生します。
日時:両日とも14:00-17:00
場所:SSS会場稲荷橋広場下の暗渠
 
・いい夢を見るためのぶくぶくエナジードリンク体験&渋谷川散歩
YUMEGIWAはいい夢を見るためのSET&SETTINGをサポートするギアの研究開発を行っています。今回はヌシに対する想像力を解放するエナジードリンクをバイオアーティストの大山龍さんと一緒に制作しました。当日はエナジードリンクをふわふわした泡状にしたものをみんなでヌシに捧げ、渋谷川(暗渠)に降り立ち散歩します。
日時:両日とも14:00-17:00
参加方法:開催時間の前に会場のYUMEGIWAブースにお集まりください
 
・ZINE:僕らが渋谷の川のヌシを呼び覚ます理由
SSSディレクターの熊井が企画と聞き手を務めた、民俗学者の伊藤龍平氏とのトークイベント「渋谷にヌシは可能か?」の記録冊子とともに、手渡し配布を予定しています。
日時:両日常時開催
場所:YUMEGIWAブース
 
・塗り絵:想像上のへにゃへにゃした生き物たち
日時:両日常時開催
場所:YUMEGIWAブース
 
*謎めいている「YUMEGIWA/DAYDREAM FUNCLUB」の活動を紐解くインタビュー記事も是非あわせてご覧ください。
 

Collaborative contents

 
10代向けの学び舎GAKUが進めるクラス「歓待としてのキュレーション」の成果展が、同日に渋谷リバーストリートで開催されます。アートキュレーションをテーマにしたこのクラスでは、キュレーションを歓待、言い換えると「新しかったり異質だったりするアイディアや存在を迎え入れることで、未来を拓くこと」として捉えています。 インディペンデント・キュレーターの池田佳穂氏をメイン講師に迎え、Chim↑Pom from Smappa!Groupの林靖高氏、都市生活者の基本的人権として「ピクニック権」を主張する東京ピクニッククラブを主宰する建築家の太田浩史氏、インドネシアのアートコレクティブruangrupaや山口情報芸術センターYCAMでキュレーターを務めるLeonhard Bartolomeus氏と共に、都市を舞台としたアートキュレーションを学んだ15名の10代。半年間の活動を経ての成果展は、「渋谷で『いきいき』生きるためのレシピ」と題されました。
 
鑑賞体験に重きを置かず、プログラムに参加体験し、来場者同士で創造的な交流をすることで都市との関係を紡ぎ直す。ここでは、近年注目を集めるラーニングの視点を取り入れたキュレーション方法が採られています。開催中は、15名の生徒と共に池田氏とLeonhard氏が現地に滞在しています。詳細をこちらからご確認の上、ぜひ足をお運びください。
 
日程:2025年3月29日(土)13:00〜21:00、30日(日)10:00〜20:00
会場:渋谷リバーストリート(東京都渋谷区渋谷3丁目18)
参加費:無料
 
キュレーター(五十音順):秋本加南子、生澤 龍之介、岩田美咲、大貫桃加、小崎隆瑛、清水紗京、鈴木日菜多、高口聖菜、髙橋七彩、豊田英杜、中島ひまり、中村優里、細井昇平、溝口元太、山﨑凪紗
キュラトリアル・サポーター:池田佳穂(インディペンデント・キュレーター)、Leonhard Bartolomeus(キュレーター)
 
 

ふりかえりトーク

 
イベントを実施して、おしまい。それは、「ビルを作っておしまい」の街づくりとどこか似てきます。shibuya slow streamは、そうであってはなりません。企画や準備に心を費やして迎えつつ、その成果をどうやって積み重ねていけるか!?というところが大事なはず。というわけで、心に留めておいたり、次に活かしていくための、手応えや感触って何だったの!?それを一同でふりかえっていく時間も大切にしています。ここでは、その一部を当日の様子とともにご紹介します。
 
 
 
ジレンマを希望に転じたい
 
動物園や博物館や美術館みたいな施設の仕事をしたことがあって、その時に思ったのは凄いジレンマがそこにあるんだなってことなんですね。
 
-え?
 
保護と展示という。本来、それって矛盾するんですよ。動物や美術品の保護や保全のことを考えると、展示という見世物にしないほうが良い。とはいえ、多くの人に見てもらうことによって、考えるきっかけになったり、次のインスピレーションを生むみたいな、社会教育効果もあることにはある。それに、経済活動としてお金を稼ぐという意味では展示は欠かせないという。だから、そういう矛盾するようなこととしっかり向き合って、その緊張関係から生まれるエネルギーを意味や意義のあることに向けていく胆力が求められているなって。
 
-ひょっとして今回のテーマの「勇気と呑気」の話ですか?
 
あ、そうそう。勇気と呑気も一見、相反する感じはありますよね。まあ、でも、そもそも都市ってジレンマの巣窟って感じもしませんか。
 
-なはははは。
 
 
開催中止を味わう
 
-1日目、雨が降っちゃいましたね。
 
うん。かなり降っちゃった。屋外での開催なので、どうしても中止にせざるを得ない。泣く泣く、そう判断するんですが、キュレーターのミヤジこと宮﨑くんが「雨が降ったら降ったらで、それはそれの応え方があるはずだから」みたいなことを言ってて、また面白いこと言うなって。
 
-転んでもただじゃおかない、みたいな。
 
そうそう。そういう一言にやっぱり突き動かされるんですよね。中止にするにしても、何かできることはないかなっていうことを考えるはずみがつく。
 
-今回、10代向けのクリエイティブスクール「GAKU」とも連動していて、そこのアートキュレーションのクラスの成果展が、slow streamと同じく渋谷川のほとりで開催される予定だったところ、GAKUの拠点でもある渋谷パルコ9階に急遽会場を移しての開催をしましたよね。
 
そうそう。ただの中止にはしない。それに、そこに関係者もお客さんも含めてみんなが集まれたりもして、それはそれで大切な時間が流れるんですよね。予定通り開催できなかったことを共に味わう感じもあって、そういう時にしか生まれない会話もあるという。
 
-計画が叶わなかったことを味わう...。タイトルも印象的でしたよね。「渋谷で『いきいき』生きるためのレシピ」という...。
 
都市でいきいきするということが、アートだったり批評性だったりするものを帯びちゃう。。
 
-雨でも「勇気と呑気」。
 
確かに。
 
 
「渋谷っぽくない」は褒め言葉なのか?
 
slow streamに足を運んでくださる方や出演や出店をしてくれる方から、結構な頻度で言われるのが「渋谷ぽくない」というフレーズじゃないですか。
 
-良く聞きますね。
 
それを肯定的に言ってくれているんですけど、考えないといけないことがそこにある気がしてて、ここ数ヶ月、わりとずっとぐるぐると思考を巡らせてたんです。というのも、90年代は「渋谷系」という言葉が褒め言葉というか、ひとつのジャンルとして認識されていたはずなんですよね。
 
-ファッションとか音楽とか。
 
そうそう。で、四半世紀を経た現在において、渋谷という言葉の響き方がどのように変わっていったのか?というところを、まさに身を持って体感しているということなんだなって。で、そういうことを考える時に参考になった書籍のひとつが、北山恒という建築家による「未来都市はムラに近似する」。
 
-村!?
 
未来は村にあるという提言なんですね。「20世紀という世紀は集落(=ムラ)と都市の分離を推し進めてきた」という歴史があるけども、そうではなくてこれからは、村というあり様に学ぶべきなんじゃないか?という。例えば、北山さんにとって建築とは、「身体に対応する空間のスケールを創造することによって、人々の活動的生を獲得できるもの」で、建築家も、これまでの建築家像を乗り越えていかないといけないという話なんですね。
 
-「活動的生」って、いきいきってことじゃないですか。
 
ですね。その、みんながいきいきするという意味でも、「生活」というところに目を向けないといけないよねということなんだけども、こんな感じでこれからの建築家像が語られています。「拡張拡大の社会に適応してきた建築家や都市計画家たちの仕事は、人々の行動を空間によって規制し、同時に空間を商品化することであったが、これから求められる役割は生活を支える地域社会そのものを指し示す空間を生み出すことになる。それは権力側ではなく、生活から生み出される制度を空間化するという創造行為である」って。
 
-「渋谷ぽくない」というのは、村っぽいということでもあるし、生活感があるということなんですかね。
 
消費者としてそこにいる、というよりも、そこで暮らしているというか、なんというか、生きているみたいなニュアンスはあるんじゃないかなとは思います。
 
 
文化=生活
 
ちなみに、どんなときに文化的だなあという実感って湧きます?
 
-歴史がある街に訪れたときとか!?
 
そうですよね。普段の暮らしや仕事の中ではあまり感じれなくて、特別な旅行とかの余暇のときに、文化を感じるみたいなことってあって、ただ、そうなると、わたしたちの日常は文化的ではないのか?という話になってくるんですよね。
 
-食器を良いものにしたり、自炊したり、散歩をするようにしたり、いろいろと工夫はしてますけどね。
 
そうそう、日常の中にそういう感覚のものを取り戻そうとしている感じはあるんですけど、内山節という哲学者が「共同体の基礎理論」のなかで、日常生活そのものが文化である状態もかつてはあったよね、ということを言っているんですね。「経済が社会のなかに埋め込まれていた時代が共同体を生み出していたのである。もっとも共同体のなかに埋め込まれていたのは経済だけではなかった。文化も埋め込まれていたし、土着的な信仰や、そもそも『生』と『死』自体が共同体のなかには埋め込まれていたのである。だからたとえば文化も特別なものではなかった。文化のすべてが日常生活のなかで展開していた。いまでは私たちは『生活文化』等の言葉を使って暮らしのなかの文化をみつめるようになっているが、共同体においてはそれを文化という必要性もなかった」って。
 
-生活も仕事も経済も文化も、生も死も、すべてが切り離されず一緒になってたということですか。
 
資本主義的なものが偏在する前には、そういうことだったよねということが語られています。そういうことを考えながら、改めて渋谷川や渋谷ストリームというものをみていくと、ちょっと面白いんですよね。なんとなく生活感が感じられるし、渋谷ストリームの広場は、金王八幡宮のお祭りでは神酒所(みきしょ)としても使われていたりして、わりと土着性が高いんですよね。お神輿が巡る拠点になっているんですよ。
 
-近くに寺社仏閣や祠もあって歴史も感じますよね。
 
そういう歴史の連続性を感じることの面白さってありますよね。
 
 
自然を含めた自治
 
自分たちが何を目指してて何をしたいのか?というところのボキャブラリーを豊かにしていきたいという気持ちがあって、さっきの内山さんの書籍にslow streamにもつながる話があったので、少し話を展開します。「自然を含めた自治」というものなんですけど。
 
-自然と自治。
 
えっと「ヨーロッパに生まれた自治は人間社会の自治である。だから、人間どうしの契約という考え方も出てくる。民主主義もまた人間社会の統治の仕方である。ところが日本の社会観は自然と人間の社会である。そうである以上、自治も自然と人間の自治でなければならなくなる」ということなんです。
 
-あー。
 
ヌシを研究している、國學院大學の伊東龍平先生と「渋谷にヌシは可能か?」というトークイベントを開催したときから考えているのは、渋谷にヌシがいて欲しいと、もし思うなら、それは一体何を願うものなんだ?ということなんですね。それって、いろんな応え方があるんです。
 
-人間と自然の共生とか?
 
そう。伊藤さんのヌシの定義を借りると、「集団的詩的想像力の発揮」というところの想像力の醸成みたいな話にもなってくるんですけど、さらに「自然を含めた自治」でもあるなって。
 
-話がつながっていきますね。
 
spiral clubによる「渋谷川のほとりのビオトープづくり」も、YUMEGIWAによる「渋谷の川のヌシに捧げる儀式」も、ゴミ拾い活動も、そのようなことへと向かっていくものだと思っているんですね。なんか自治っていうと難しく響いちゃうかもしれないんですけど、たとえばですよ、「渋谷川がかつての清流のようになったとして、そこの清掃をみんなでやりつつ、そこで鰻がとれちゃったりして、それを感謝しながらみんなで食べる」みたいなことだと思っているんですよ。
 
-楽しそう!
 
まあ、妄想ですけども。でも、かつての明治大正時代の渋谷川には鰻とか蛍とかやっぱりいたらしいですね。水車もあったし。
 
 
都市とは、宿場町である
 
-良い都市とは、どのようなものか?って考えるの楽しいですよね。
 
すよね。なんかそこからかなあって。
 
-都市って、そもそもなんなんでしょうね。
 
すよね。「都市は人類最高の発明である」という書籍もあるんですけど、そもそも都市って宿場町として栄えていったという経緯があるじゃないですか。
 
-人の往来があると、泊まったり休んだりする場所が必要ですもんね。
 
いろんな人がいるから、交流も生まれて、いろんな情報やものの交換がされていく。そういう宿場町について、内山さんが同じく「共同体の基礎理論」で印象的な説明を加えています。宿屋が儲からなくても経営をつづける意義についての話なんですけど。
 
-儲からなくても良い宿屋!?
 
これまた引用します。「湯治宿の主人に、なぜこんな儲からないことを何百年もつづけてきたのかと、私は聞いたことがある。その宿は江戸時代からつづいた宿で、生活の基盤は農業の方にあった。湯治宿はほとんど収入に寄与していなかった。『湯治宿というものは儲からなくてもいいんだ』と宿の主人はいった。昔から遠方から当時のグループがくると、宿の庭などに市がたった。きた人たちもいろいろなものをもってきたし、村の人もさまざまなものをもって集まってきた。庭で物々交換の市が立ったのである。そのなかでも重要だったのは作物の種や農具、仕事上のさまざまな道具だったという。新しく便利な農具や道具を手に入れた人は、それをもってきて使い方を教えた。新しい作物の種をもってきた人は栽培法を含めて『販売』した。そういう場所の提供が湯治宿の役割だから、儲からなくても経営をつづける意義はあったのだと宿の主人はいった」ということなんです。
 
-「宿の庭などに市がたった」っていうのも良いですね。ちょっとslow streamっぽい。
 
吉江俊という都市計画研究者が、「<迂回する経済>」の都市論」という書籍が、この話に連なる感じで示唆的なんですけど、「わかりやすい利益や目先の役に立つこととは異なる」意味や意義を出現させるためには「迂回」しないといけないということで。
 
-迂回、遠回り、回り道、寄り道。
 
因果関係というものは、そんな単純に考えられるものではないよねっていう感じなんですが、「都市開発では、成功させるためのストーリーが定式化されやすく、多くの場合それが踏襲される。しかし、実際の都市や地域の現場では、そうしたストーリーでは捉えられない小さな動きがあり、そこには開発を正当化する力強い経済合理性とは異なる小さな合理性が、無数に働いている。その合理性とは暮らしの合理性であり、私たちのパブリックライフの合理性である。最短距離で利益を追求する計画の代わりに、パブリックライフに目を向け、それがわかりやすい利益や目先の役に立つこととは異なる、もっと深い次元での生活の豊かさを実現していることに注目するのが「迂回する経済」である」っていうことなんです。
 
-「深い次元での生活の豊かさ」、気になります。
 
いろいろと話しがつながっていきますよね。
 
 
虹と市
 
遠方からのグループが訪れると宿の庭に市が立つって、なんかわくわくしますよね。山の部族と海の部族の出会いとか、なんかそういう想像が膨らみます。都市と市っていうのは、ほとんど同じ話になってくる気がするんですけど、歴史学者の網野善彦が、市と虹について触れていて、凄い印象的だったんですよ。
 
-市と虹!?
 
「日本の歴史をよみなおす」では、「虹が立つと、かならずそこに市を立てなくてはならないという慣習が古くからありました」とされています。
 
-ロマンティック!
 
なんかグッと来るものがありますよね。同著で、歴史学者の勝俣鎮夫の研究に触れながら「虹の立つところに市を立てるのは日本だけではなくて、ほかの民族にもそういう慣習があり、それは虹が、あの世とこの世、神の世界と俗界とのかけ橋なので、そこでは交易をおこなって神を喜ばさなくてはいけないという観念があったのではないか、といっておられます。そしてこれによってもわかるように市場は、神の世界と人間の世界、聖なる世界と俗界との境に設定される、と指摘しておられます」とのことでした。
 
-交易をおこなって神を喜ばさなくてはいけない!
 
渋谷川のヌシを喜ばせたいと思う気持ちがやっぱり、ある。で、その気持があながち単なる思いつきを超えていく感じがあるんですよね。調べれば調べるほどに。
 
 
虹を見ると踊る心
 
-今回のふりかえりトークも、slow streamの当日のことなどに全然触れてないですね。
 
現場にいるとやっぱり心が動く局面がたくさんあって、本当は全ての内容を紹介していきたいという気持ちがあるんですけど、それを直接的にレポーティングするよりも、そこからインスピレーションを受けたことを言いたくなっちゃうんですよね。自分の中では、いろいろとつながっているんですけども、それを全部書き始めると凄い分量になるというジレンマが...。
 
-「迂回する」レポート。
 
に、なっちゃう。でも、当日の様子は、立山くんが空気感もとらえた写真をたくさん撮影してくれているし、菊池さんがInstagramでばしばし発信してくれているので、あの手この手で、アーカイブを残していければ良いかなって。事実だけじゃなくて、インスピレーションのアーカイブ。
 
-インスピレーションの記録。
 
それでいうと、さっきの「虹が立つと、かならずそこに市を立てなくてはならない」っていう話があったじゃないですか。社会学者の真木悠介が「時間の比較社会学」という書籍で、近代と前近代、言い換えると資本主義が発展する前と後での時間感覚のようなものを分析しているんですけど、そのなかで「『虹を見ると踊る』心をいつももちつづけていれば、近代社会のビジネスマンやピュロクラットはつとまらないのだ」って言っているんですね。
 
-「虹を見ると踊る心」!
 
要は、それがあると経済発展をしない構造になってるよねって。
 
-ガーン。
 
いやでも、もう時代もどんどん変わっていく中で、「虹を見ると踊る心」を持ちながら、持ちながらと言うか、それこそが豊かな暮らしや社会をつくることだよね、みたいな感じになっていくんじゃないですかね。なっていくというか、そうしていきたいというか。
 
-その方が楽しそう!「虹、市、踊る心」って、なんかslow streamぽいです。
 
「勇気と呑気」っていうことで。
 
-!!!
 
「勇気と呑気」って、踏ん張って出すもんじゃなくて、本当は、常にそこにあるものだと思うんですね。だから、それを社会に巡らせていこうよって思うし、「虹を見ると踊る心」だって、きっとみんなあるでしょ。うちの子どもたちも、虹を見つけて踊ってたもんなー。
 
 
 
 
Shibuya Slow Stream実行委員会
supervise:丹野暁江、白井亜弥 direction:熊井晃史  curation:阿久根聡子、宮﨑岳史、角田テルノ、橋詰大地 daily practice:Spiral Club、YUMEGIWA design:somedarappa  film photograph:立山大貴 social media management:菊池香帆  project management:橋本ゆう、作永理那
 
ayU tokiO、Le Makeup、くまちゃんシール、pottmann、suppa micro panchop、DODDODO×UNBE、RUOH、ぺのてあ、おしるこちゃん、33 11 curated by 宮﨑岳史/  Yosi Horikawa、grrrden、Mayu Amano、SUPER-KIKI  SHOP、GRRRDEN 治癒と創造の庭、全体整体 kumo curated by 阿久根聡子 (都市はわたしたちのダンスフロア)/Okk、Drinkuppers curated by 丹野暁江 /ReverseMaker Hi-D 、WHR(S)hop、PORTABLE PARK、Adwee Lalawee 2、ごはんの木 curated by 角田テルノ、橋詰大地(わなげぼーぼー)/KISHIN TATTOO curated by Spiral Club