REPORT of SHIBUYA SLOW STREAM vol.16
今回のテーマは「からだを預けたくなる、音楽」
渋谷川のほとりで、音楽を、場所を味わう。からだを預けたくなる先があるということは、とても幸せなこと。そういう都市であらねば、あって欲しい、と思います。
開催概要
Stage
「カーテンアケロ(ヒューマンビートボクサーの絵本読み聞かせ)」by MAIN TENT
絵本の古本屋MAIN TENTで不定期に行われている予約の取れない人気イベント。まだこの世の中にないものを生み出そうと、ヒューマンビートボクサーAFRAと、hip-hopダンサーCHITO、大の大人2人が遊び心満載でお届けする、リズミカルでファンキーな読み聞かせならぬ読み聴かせエンターテイメント。
カーテンアケロ by MAIN TENT
まだこの世の中にないものを生み出そうと、ヒューマンビートボクサーAFRAと、hip-hopダンサーCHITO、大の大人2人が遊び心満載でお届けする、リズミカルでファンキーな読み聞かせならぬ絵本読み聴かせエンターテイメント。
MAIN TENT
一度その役目を終えた絵本を世界中から集め、新たな誰かのもとへ届ける。0才から100才の子どもが、自転車にのり、時には飛行機にのりやって来る、吉祥寺の絵本専門古本屋。
「その場所の地中から生まれる音楽 」by 沖メイ feat 松下マサナオ(Yasei Collective, GFJB)
エレクトロニカ、民族音楽、クラシック、ジャズ、ロック、猫、インコなどから影響を受けた楽曲をお届けします。
沖メイ
東京生まれ。日本のバンド・ZA FEEDO のヴォーカル、作詞、作曲、アートワークを担当。2020年2月、藤原さくら Digital Single "Twilight" にハーモニー&コーラスアレンジで参加。2020年7月、自身として初めてのソロ作品「Half Way For Now」をディスクユニオンからリリース。2020年7月、自身として初めてのソロ&セルフプロデュース作として「Half Way For Now」をディスクユニオンからリリース。2021年UR都市機構「さんかく問屋街アップロード」とのタイアップ曲”レスタウロ”をFRIENDSHIP.からリリース。2023年「YAMU」をリリース。
Instagram|@MEIOKI
「都市はわたしたちのダンスフロア 」by アクネサトコ
夜遊びを通した都市介入のアイデアを集積したZine『都市はわたしたちのダンスフロア』のコンセプトを体現すべく、稲荷川広場をダンスフロアに見立てたDJイベントと、Zineを販売するポップアップストアを同時開催。
アクネサトコ
アーバニスト、編集者。夜遊びを通した都市介入のアイデアを集積したZine『都市はわたしたちのダンスフロア』を出版し、飲み歩きながら行商している。
Instagram|@kune.co
DJ’s
【17日(金)】
・Mayu Amano
音楽体験がもたらす陶酔感、没頭感に魅せられ、DJをはじめる。どこか別空間に迷い込んだような錯覚を日々追い求め模索中。現在は東京発の音楽発信プラットフォームTsubaki FMでのレジデンシーを活動の軸に据え、[世界の実験的なジャズ]をテーマに毎月選曲している。2022年9月からはUKのAaja Radioでも自身の番組を持ち、過去にはNTS Radio, WW Tokyo, Foundation FM, Radio Alhara, n10.as など世界各地のラジオへミックスを提供。深海の生物発光が生み出す幻想音景色をコンセプトにした多角的なパーティーGlowing Wavesを主宰、音楽シーンの更なる新境地へと潜り込む。
Instagram|@mayuness1
・馬場宏樹(Qings)
「Qings」名義でバレエ、ファッションショー、美術展での音楽演出・作曲に従事。昨今は大阪万博着工記念イベントでドローンショーの音楽演出総監督に着任。ネオクラシカル、エレクトロニカを軸に創作活動を行い、2023年夏にはソロプロジェクトでの楽曲リリース。
Instagram|@babastagram
・Sofar
ジャンルを横断しながら自然と身体が動いてしまうようなDJをお届けします!東京在住のDJ。現在フロアと大学を往復中。
Instagram|@sofarimenjoyingit
・pnnikin
みんなのムードをあれよあれよと操ります。
東京在住、21歳です。最近は幡ヶ谷や小岩でDJをしたり、友人の映像に加える音楽を制作しています。また、先日コレクティブetherから香港のラジオにmixを提供。何か耳に引っ掛かりのある音楽が好きです。
Instagram|@pnnikin
【18日(土)】
Kankyo Records
2021年、三軒茶屋郊外の集合住宅内にオープンしたレコードストアです。Kankyo Recordsでは”住環境でのリスニング”をテーマに世界中から厳選したAmbient〜New Age〜Jazzといったホームリスニングに向いた音楽の他、住環境自体にも目を向けより良い環境でのリスニング体験”というコンセプトのもとにセレクトしたオーディオや家具などのホームウェアも取り揃えています。2023年からは音楽レーベルとしても活動を開始し、エッセンシャルオイルとカセットテープを合わせたプロダクト『Sound incense 』4種類をリリース。
Instagram|@kankyo_records
・DJ サモハンキンポー
レコードレーベル【MAD LOVE Records】や出版社【焚書舎】を運営する他ソウルバンド “思い出野郎Aチーム” や 民謡クルセイダーズのKatsumi Tanakaとのユニット“民謡デリバリーサービス” のメンバーとしても精力的に活動。エキゾ〜トロピカル〜ダンスを横断した独特のバイブスがクセになります。Kankyo Recordsの作品レビューも担当。
Instagram|@djsammohungkambo
Twitter|@hajimematsushit
・TOMC
東京を拠点にカナダ【Inner Ocean Records】、日本の【Local Visions】等から作品を発表し,近年は長谷川時夫 (タージ・マハル旅行団) が結成した集団即興演奏コレクティブ〈Stone Music〉に参加するなど多方面での活躍。2023年5月には初のレコード作品となる最新アルバム『True Life』をリリースしたばかりの新進気鋭のビート&アンビエント・プロデューサー。ライターとしてKankyo Recordsの作品レビューやサイゾーなどでの連載も行う。
Instagram|@tstomc
Twitter|@tstomc
・Yudai Osawa
Kankyo Recordsのデザイン全般を担当し、アンビエントユニット"UNKNOUN ME"や”ATORIS”のメンバーでもあるグラフィックデザイナーのYudai OsawaによるDJ。Kankyo Records店主も含め数人で彼のオフィスに集まり定期開催しているリスニング会で流れているAmbient〜Techno~Experimentalなど独特の審美眼で選盤されたレコードは必聴。
Instagram|@yudaiosawa
Twitter|@OsawaYudai
・Jesus Weekend *Live
神奈川を拠点に活動する音楽家 “Seira Nishigami” こと “Jesus Weekend”。2021年に発表したデビューEP『Rudra no Namida』がカルトヒットし今年Kankyo Recordsからリリースされたエッセンシャルオイルとカセットテープを合わせたプロダクト『Sound incense 朝』では太陽が徐々にのぼり体が目覚めていくようなエネルギーを感じる美しい作品をつくった彼女の音楽は、空間を歪めるような没入感満点のサイケデリック・ニューエイジは会場全体を白昼夢の世界に誘います。
Instagram|@jesusweekend
Twitter|@jesus_weekend
「The Room COFFEE & BARセッション」by沖野修也+磯崎泰一
かつてストリーム1階に2年間限定で存在した伝説の店舗で流れていた曲を当時のクリエイティヴ・ディレクターとコーヒー・アドバイザーが再現します。
The Room COFFEE & BAR
Instagram|@theroomcoffeeandbar
Workshop&Popup
「乗れるロボット『スケルトニクス』」by 株式会社ロボットライド
身長約3メートルのエンターテインメントロボットです。モーター等の動力を使わず、独自の「三次元閉リンク構造」により、装着した人の身体動作を人の力で拡大し、まるで巨人になったかのような体験と演出ができます。
株式会社ロボットライド
装着型ロボット「スケルトニクス」を開発している外骨格クリエイター集団です。
Instagram|@skeletonics
「スライムやウニを光らせよう!」by 板橋区立教育科学館
ウニやナマコといった棘皮動物が専門の桑原主任研究員による、ウニの殻を使った卓上ランプが作れる「ウニランプ:シヴヤver」と、日本で最もスライムを愛する男・櫻井研究員による、特別なスライムが作れる「思った以上に光るスライム」を体験できます。
板橋区立教育科学館
池袋から東武線準急で10分のところにある区立科学館。去年4月より新たに「人を展示する科学館」とコンセプトを設け、区内企業や、国内外で活動する研究者やアーティストなどとコラボレーションした、ローカルとグローバルを横断する独自の科学館活動を展開中。
Instagram|@itbs_sem
「渋谷川のビオトープ観察のためのピクニックマットづくり」by Spiral Club
前回SSSで渋谷川のほとりで、ビオトープづくりにチャレンジしたSpiral Club。今回はビオトープ観察で使う<ピクニックマット>を編むワークショップを行います。編み物をしながら、環境に関する日々のモヤモヤやワクワクを対話する「オープンミーティング」も行います。
Spiral Club
「環境について話そう!」をテーマに活動するオープンコミュニティ。どんな社会の変化も「一つの会話」から始まるのでは?そう考え、イベントやフリーペーパーを通して環境について「対話」するきっかけを作っています。
Instagram|@spiral_club
Live
【17日(金)】@金王橋広場
・自然界ラッパーOMG
自身の食生活を見直したことをきっかけに、全てはつながっていることに気がつき、持続可能な暮らしや社会に興味を持つ。共生革命家・東京アーバンパーマカルチャー主宰のソーヤ海と、NPO法人グリーンズ代表理事・greenz.jp編集長の鈴木奈央主宰の「パーマカルチャーと平和道場」の第一期研修生となる。全ての楽曲は自身で作詞、作曲、プロデュースを手がける。
楽曲は玄米、昆布、梅干し、おむすび、納豆など、食(いのち)、自然や日本の文化/伝統にまつわる物が多いが、Mottainaiやコンポストトイレなど、持続可能な生き方、地球のことを考えてできることを歌う楽曲が基本となっている。
Instagram|@ohmygenmai
「dance,dance,dance,♪」by boy,boy,boy,?
思わず踊りたくなってしまう音楽を耳にしたとき、いっしょに踊ることをたのしめたり、踊る環境がよりたのしくなっちゃうんじゃないか?!というものをたくさん持っていきます!生活の中でどれだけ踊れるか、がだいじです♪
boy,boy,boy,?
ぼぼぼってよみます。ぎゅっとできるものをつくります。
Instagram|@bobobo_dayo
「どこでも遊び場に変えるプレイキット」by PORTABLE PARK
PORTABLE PARKは、自由に、安全に、みんなで遊べ、収納・持ち運び・片付けなど管理も簡単な「どこでも遊び場に変えるプレイキット」です。子どもの発育に大切な遊びの要素と、遊び場を提供する大人に負担のない特徴を持つ、優しい遊具ができました。
PORTABLE PARK
PORTABLE PARKは、幼稚園などの保育施設はもちろん商業施設や地域の共有スペース、フェスのキッズスペースや都会のストリートなどあらゆる場所にフィットするため、「持ち運べる公園みたい」と言われたことがきっかけで名付けられました。PORTABLE PARKを通してどんなところで、どんな遊びが生まれ、どんな繋がりが育まれていくのか…ぜひ多くの方に探っていただければ嬉しいです。
Instagram|@portable_park
「みんなで巨大シャボン玉を浮かばせよう!」by SHIBUYA SLOW STREAM運営チーム
大階段前の稲荷橋広場に巨大シャボン玉が登場!!みんなも一緒に巨大シャボン玉をつくろう♪
Food&Drink
DRiNKUP!!
音楽、アート、スケート、自転車、パーティーなどのカルチャーが好きな作り手による「おいしいだけじゃない」個性豊かで親しみやすいクラフトビールを6か国より輸入しているインポーターです。高円寺の直営ボトルショップやオンラインショップも運営しております。ジャンルを超えてカルチャーのクロスオーバーを楽しむとき、あったらいいなと思えるクラフトビールをご用意しております。
Drinkuppers Inc.
海外現地でも容易に手に入らないような、希少でハイクオリティなクラフトビールを取り扱うインポーターです。 直接ブルワリーへ赴き、信頼関係を築くことから始めることで、唯一無 二の良質なラインナップを実現しています。
Instagram|@drinkuppers
The Room COFFEE & BAR
沖野修也と★STARMARK®プロデュースによる、スペシャリティコーヒーとお酒を堪能しながら、DJのプレイを楽しむことの出来るカフェ&バースタイルのお店。2021年12月渋谷ストリームにオープン、2023年3月31日に惜しまれつつ幕を閉じた同店が、1日限定で復活します。
The Room COFFEE & BAR
Instagram|@theroomcoffeeandbar
ふりかえりトーク
イベントを実施して、おしまい。それは、「ビルを作っておしまい」の街づくりとどこか似てきます。SSSは、そうであってはなりません。企画や準備に心を費やして迎えつつ、その成果をどうやって積み重ねていけるか!?というところが大事なはず。というわけで、心に留めておいたり、次に活かしていくための、手応えや感触って何だったの!?それを一同でふりかえっていく時間も大切にしています。ここでは、その一部を当日の様子とともにご紹介します。(開催前の対談「想いを交わすうしろ側トーク」はこちらからご覧ください!)
なんだかスゴかった
-いやあ、今回も楽しかったし、なんだかスゴかったですね。アクネサトコさんによる「都市はわたしたちのダンスフロア 」の一環で2周年を迎えるKankyo RecordさんたちがDJをしている時に、大人たちはさることながら子どもたちが自然と踊り出すという景色には感動しました。
2日間にわたって、いろんなグッとくる景色が広がっていましたけど、印象的な一コマでしたね。まさに「都市がわたしたちのダンスフロア」になっていた瞬間でしたし、テーマである「からだを預けたくなる、音楽」という感じもしました。
-「からだを預けたくなる」という意味では、ロボットライドさんの約3mのロボット「スケルトニクス」もやっぱり老若男女誰もが乗りたくなるし、からだを預けたくなるという感覚がありました。
人が操縦した大きなロボットが、広場を動いている様子は圧巻でしたね。それに、そのロボットと、boy,boy,boy?さんの大きな天使の人形や、PORTABLE PARKさんのプレイキットとの即興的なコラボレーションも生まれて、ちょっと映画を見ているようでした。
スピーカーから音楽を流せば音楽イベントになる、わけではない
-と、まあ挙げていけばキリがないんですが、開催前の対談では、「からだを預けたくなる」ことがどういうことか?とともに、音楽と都市と言っても、「ただスピーカーから音楽が流れていればいいというわけではない」とか「そこの違いとちゃんと向き合っていかずに、文化みたいなことを語ってはいけない」なんて踏み込んだ発言も出ましたが、その辺りはどうですか?開催後に感じることとして。
いやー、あのー、SSSってイベントと言えばイベントなんですけど、運営メンバーの中で、「イベントって言いたくない!」という議論が結構あったじゃないですか。
-あー、ありましたね。
で、さんざんぱら話し合いに時間をかけて最終的には「『催しもの』かなあ」と。だから、SSSのInstagramのプロフィールでも、「おだやかに流れる渋谷川沿いを舞台に、みんなでつくる催しもの」と紹介しているわけですよね。イベントって言っちゃった方が楽だし分かりやすいのに、わざわざ。
-笑。
それって、思い返してみると、要は一過性のものにしちゃいけない、やりっぱなしのものにしちゃいけない、という想いやこだわりがみんなにあったということですよね。ちゃんと時間や経験や成果を積み重ねていきたいという。
-それは、ほんとそうですよね。開催前後でこういった会話の機会をつくっている理由の一つでもありますよね。
はい。で、積み重ねていきたいんだとしたら、当然のように、これまで積み重ねてこられたものにも、同じように意識を向けていくべきだし、それってプロジェクトの話だけでなくて、人にも当てはまると思うんですよ。
-というのは?
えっと、一つの例ですけど、先ほど話にあがった「都市はわたしたちのダンスフロア 」のアクネさんって、もう本当に夜遊びをし続けて生きているわけですよね。しかも、いろんな都市で。そういう生き方、時間やエネルギーのかけ方を、普段からずっとしている。その積み重ねの延長線上に、今回のDJ陣のブッキングがあったり、ZINEがあったりするわけですよね。本番自体は、数時間で終わってしまうものですが、その前に膨大な時間とエネルギーが注がれているんですよね。DJだって、音源をリサーチすることに、人生を割いている。
-あー、ですよね。
もうね、それも挙げればキリがなくって、乗れるロボットの「スケルトニクス」をつくったロボットライドの阿嘉さんだって、あんまり自分から言わないけど、ロボコンに熱中して2008年の大会で優勝した経験もありつつ、ずっとロボット制作を続けているわけですよね。
-八王子のアトリエも、かっこ良かったですよね。
ですです。で、時間をかけていくというのは、生命をかけていくということとほとんど同義ですからね。そういうものが持ち寄られて成り立っているということを、やっぱりどこかでちゃんと意識をしていかないことには、文化とか、都市文化みたいなことを語っちゃいけない気がします。特別なことは、いつものことからじゃないと生まれないんですよ。
-また熱くなってきましたね。
もう、それはしょうがないじゃん!
-上澄みをすくうだけだったり、種まきや耕したりはしないで果実だけもぎとろうしたりする仕事って、ちょっとかっこ悪いな、とは思います。
そう。そういう意識がちゃんとないと、すぐダサくなっちゃう。
社会的な意味は、社会的に見出されていくべき
熱くなったついでに、もう一ついいですか?
-ほっといても、喋ってるでしょうに。
え、いや、あの、SSSに関わって下さる方々って、みんな個々のパッションで動いているようなところがあるじゃないですか。
-それは、ほんとそうですね。
ですし、そういう方に関わってもらいたいわけですよね。で、当たり前と言えばそうなんですが、義務感というか、やらされ仕事みたいになって欲しくないわけですよね。
-もちろん。
そういうパッションを持つ人が、都市を突き動かしていると思うんですよ。逆にいうと、そういう人を失うと、都市はエンジンを無くしてしまうという。
-ああ、なんとなく分かります。
で、そういったパッションが発揮し辛くなるような王道のフレーズっていうものがありまして。
-え、なんですか?
「それって、なんの意味があるんですか?」という。
-ああ。
なんというか、意味とか意義とか目的って、とても大切なものなのですが、その運用の仕方って難しいなあと日々感じているんですね。
-というのは?
ここまでの話の流れで言うと、SSSに関わってくださる方ってみんな、それぞれがそれぞれに何かに突き動かされて日々を過ごしていますね。思わず手を動かしちゃう、足を運んじゃう、何かをつくっちゃうという。ある意味で言うと、仮に言葉にしないにしても何かしらそこに「確かさ」があるわけです。で、「なんの意味があるんですか?」という問いには、社会にとって意味があるのか?場合によっては会社にとっての意味があるのか?というニュアンスが含まれていることが多いんですよね。
-ああ。
で、とするならば、その「社会的な意味」なるものは、それこそ社会的に見出していくべきだと思うんですよ。
-なんとなく分かるんですけど、もう少し説明してもらっていいですか?
「社会的に見出していく」というのは、個々の誰それに丸投げするんじゃなくて、「関係のなかで」ということなんですけど、まさに都市の広場がそのための舞台になるよね、と思うんです。
-おお、SSSとつながると。
だって、誰にでもひらかれている広場で今回のSSSを体験したり知ったりして、「ああ、これはナイトタイムエコノミー振興につながる」「ああ、これはウォーカブルシティってやつだ」「エンタメロボットを通した教育の可能性がある」「クリニクラウンみたいに大きい天使の人形やPORTABLE PARKのキットが、長期入院している子どもたちのところに行ったら素敵かも」「ヒューマンビートボックスと絵本の読み聞かせを図書館でやったら、音楽と本の幸せな出会いかも」とか、それぞれの立場や知見から意味を見出して、それを持ち寄れたら素敵じゃないですか。そこから、なにか新しい挑戦を育んでいけそうです。広場ってそういう関係が結ばれたり、新しい挑戦が起こったりするための場所ですよね、というのは強調しておきたいです。
-SSSをそういう活動にしていきたいですよね。「SSSをイベントって呼びたくない」という当初の議論ともつながっていきますね。
そうなんですよね。「異業種交流会」みたいなイベントに出かけて名刺交換してるくらいなら、SSSに来て欲しいです。
-笑。
まあ、それはそうとして、とにかく最初から分かりきったことをやっていても、二番煎じだったり、新しい挑戦は生まれづらいと思うんです。なんだかよくわからないけど、突き動かされちゃう!という想いを持ち寄って事を起こして、その後にみんなで、その意味や意義を見出せたら嬉しいんですよね。
-それは、SSSがMTGの数が多い理由でもありますよね。
今の社会は、「後付け力」が試されているんですよ。それが豊かであればあるほど、挑戦や試行錯誤が育ちやすくなるんだと思います。
リラックスするほうが難しい
-いつにも増して熱いですね。
今回はなんか、これくらい踏み込んでおいた方が良いような気がしちゃって。ただまあ、ついつい力を入れ過ぎちゃうところがあるんですが、力を抜く方が難しいんですよね。それこそ、ゆっくりくつろぐって、案外できない。そういう人、多いんじゃないですかね。
-ちょうど一年前のSSSのテーマは、「うれしい養生、それぞれのセルフケア」でしたね。レポートでは「身体や心を鍛えるのもいいけれど、どちらかという『労(いたわ)る』ことの方が大切な気がしちゃう今日このごろ。でも、がむしゃらに前に前に進んできたら、そのための方法も忘れてしまっていた。なんていう悲劇はできれば避けたい。だからこそ、まちなかでふとしたときに、それを思い出させてくれる人やものと出会えるのはとても大切な気がします」とあります。
ああ、「労る」ことや「からだを預けたくなる」ことを一貫して、SSSでは大切にしてきていますよね。言い方を変えると「SHIBUYA SLOW STREAM」のSLOWの意味をずっと考えているという節があります。それに、からだの預けがいのある街だったり、ゆっくりしがいのある街って、良い街だと思いますよね。
-ほんとそうですね。そもそも、渋谷川のほとりって、そういう想いでつくられているんだと思います。そのポテンシャルをどんどん生かしていきたいですよね。
ですね。イノベーションなるものって、前のめりに向かっていくよりも、リラックスした状態で宿るものなような気もするんですよね。
渋谷川のビオトープにヤゴが宿った
-前回SSSで始まった、Spiral Clubさんによる渋谷川のほとりのビオトープづくり。今回のSSS開催までの間も、毎週集まってメンテナンスや環境に関するモヤモヤやワクワクを対話する「オープンミーティング」もひらかれていましたね。
SSS自体の開催は2日間でしたが、日常的なそういう営みと連動できるのがとても嬉しいです。
-嬉しいと言うと、ついにトンボが卵を生んで、ヤゴが成長しているという!!!
もう念願が叶ったというんでしょうか。渋谷川そのものには、どこからかトンボが飛んで来るんですが、都市河川ということもあり、卵を生んでもおそらく流されちゃうんですよね。ヤゴが居着くことができないという。「からだの預けがいのある街」って言った時に、トンボにとってもそうであるといいなあと願っています。
-小さなビオトープではありますが、いろんな発見がありますね。
川そのものの工事は、大ごとになってしまいますが、そういった小さな挑戦の積み重ねで、みんなで手応えを掴んでいけたらいいですよね。
-ですね。
みんなで育んでいける何かがある、というのは街にとってとても大切なような気がするんですよね。大きく言えば、渋谷川のほとりをみんなで育んでいきたいんですよね。
-そういえば、ビオトープの作業をしていると、地元の方や通りすがりの人にすごい話かけられるという。
僕も、何人もの地元の保護者の方から「渋谷川が、子どもたちが水遊びできるようになったら最高なんだけど!」って声をかけられました。
-夢がありますね。
ビオトープそのものの継続については現在協議中ですけど、人が集まる理由だったり吸引力って時代に応じて変わっていくものでもあるかもしれませんが、そういう夢や理想があることって、都市が都市であるための理由だとも思います。渋谷川で水遊びできるようになったら、たくさん人が集まりそうですよね。
かだらを預けるということ、命を託するに足るということ
-そもそも「からだを預ける」ということの、その預け先って、安心や安全といった信頼も必要でしょうし、そこに居たくなるっていう居心地の良さも必要でしょうし、それこそが人が集まる理由という気もします。
なんとなく普段生活をしていると見逃しちゃうんですけど、仕事や遊びにいく先の場所に対してどう思えているかって、結構大事ですよね。今回のテーマを考えるにあたって参照していたフレーズをちょっと長いんですけど、引用して終わりにしますね。民藝運動にも関わっていた陶芸家の河井寛次郎と、今和次郎やル・コルビジェにも師事した建築家の吉阪隆正の書籍からです。ここまでの話と結構つながってきますし、懐にしまって置きたいフレーズです。
「これは真当の住居だという気がする。安心するに足る家だという気がする。喜んで生命を托するに足る気がする。永遠な住居だという気がする。これこそ日本の姿だという気がする。小さいなら小さいままで、大きいなら大きいままで、どれもこれも土地の上に建ったというよりは、土地の中から生え上がったと言いたい。(河井寛次郎「火の誓い」」
「時間空間とは、人にとっては歴史と風土だといえよう。ある土地で祖先から住んで積み上げてきた知恵、それは時空に一致した姿といえようか。そこに示されている成果物は、厳しい状況の中での祖先の苦労の報酬なのである。注ぎ込まれた生命がひしひしと訴えてくる。世代を超えようとした文化がそこにある。単なる情報ではない。知識ではない。そこに人生への詩や夢が託されて、羽ばたいた想像力、時代を洞察した叡智、工夫洗練された表現などが渾然一体となっている。私たちが原始的な民族の村を訪ね、自信をもって住んでいる人たちの所を訪れる時、どんな素朴で、拙であっても、そこから深い感動を受けるのはこのためだ。(アルキテクト編「好きなことをやらずにはいられない 吉阪隆正との対話」)」
次回のお知らせ
次回のSSSのテーマは、「音楽、珈琲、芸術、春のフォーメーション(仮)」。渋谷ストリームの3〜6階をまるごと舞台にして、音楽、珈琲、芸術が集まります。でも、生み出したいのは「分類」じゃなくて「フォーメーション」。思いもよらない、なにかと出会っちゃうような、なにかが始まっちゃうような。春のはじめにそんなフォーメーションを組めれば最高です。開催日時は、2024年3月16日(土)、17日(日)。詳細は、こちらのホームページやInstagramにてご案内します。皆さまのお越しを心よりお待ちしております。