REPORT of SHIBUYA SLOW STREAM vol.13

REPORT of SHIBUYA SLOW STREAM vol.13

 

今回のテーマは「風を感じること」

渋谷の街のビルの狭間にある自然、渋谷川。鴨が訪れたり、実は蛇が生息していたり、小さな畑が連なっていたりと、呼び起こしつつ守り育みたい環境が残されています。初夏の5月末のこの時期、そんな渋谷川のほとりには心地よい風がそよぎます。都心で風を感じつつ、ゆっくりのんびりくつろぐこと。それってなんだか、贅沢な過ごし方なような気もしますし、あるべき未来であるようにも思います。
 

「サウンドインスタレーション 鉄の調律

風を受けて動き、鳴り響く鉄彫刻作品が並び、鉄のやわらかい音が流れるインスタレーション。手回し式万華鏡など、実際に触って体感できる作品も。
 
飯田誠二(鉄彫刻家)
「鉄の魅力を伝えたい」。自由自在に鉄を操り、楽しい鉄彫刻を目指す。独自の工法で素材の性質を生かした作品づくりを始め、枠を超えた様々な分野で鉄の新たな世界観を表現している。
Instagram|@seijiiida
 
 

「Placemaking Kit Workshop」

空を見上げたり、話し込んだり、くつろいだり。一人でも、二人でも、みんなでも。屋外空間を自由に楽しむストリートファーニチャーを工夫しながらつくって過ごすワークショップ。
 
勝亦丸山建築計画
「その場所や前提の条件を探り(RESEACH)、そこに何が必要かを考え(DESIGN)、実践を通して学びを得る(OPERATION)」までを行う建築家チーム。
Instagram|@katsumaru_office
 
 

「Parallel Collage」

無意識に見過ごしている風景を切り貼りし、もう一つの渋谷を描き出すワークショップ。渋谷の風景をシール紙に印刷し、パーツごとに分解したものを貼り合わせるコラージュ作品を制作。渋谷の風景がプリントされたTシャツも販売。制作された作品はプロジェクトのInstagramにてアーカイブしていきます。(写真提供:Palab(パラボ))
 
クリエイティブユニット・Palab(パラボ)
意図せず偶発的に生まれた端材を集め、 それらを「同時並行世界 (parallel) の素材」と仮定し、 そこから見えてきた世界を描き出す研究所のようなクリエイティブユニット。
 

ふりかえりトーク

イベントを実施して、おしまい。それは、「ビルを作っておしまい」の街づくりとどこか似てきます。SSSは、そうであってはなりません。企画や準備に心を費やして迎えつつ、その成果をどうやって積み重ねていけるか!?というところが大事なはず。というわけで、心に留めておいたり、次に活かしていくための、手応えや感触って何だったの!?それを一同でふりかえっていく時間も大切にしています。ここでは、その一部をご紹介します。(開催前の対談「想いを交わすうしろ側トーク」はこちらからご覧ください!)
 
 
目線が変わるだけで、都市の体験が大きく変わる
-SSS vol.13、ありがとうございました!渋谷川のほとりで「風をゆっくり感じること」をテーマに掲げての開催となりましたが、今回もご来場の皆さんがのんびりゆっくり過ごして下さっているのがとても印象的でした。勝亦丸山建築計画さんの「Placemaking Kit 」のリクライニング的なストリートファーニチャーも深く腰掛けられる分、自然と空を見上げるような角度になって、気持ちも自ずとそういうコンディションになっていく印象がありました。
 
勝亦丸山:想像以上に皆さん活用して下さっていましたね。1人でも、2人でも、大人数でも、こちらが驚くような使い方も生まれていて、作り手としても新鮮でした。ゆっくりくつろぐためにできている建築デザインって、屋外にあまりないんですよね。
 
-そうですよね。のんびりと空を見上げるというのもそうですが、絵を描いたり、宿題やゲームをしたり、飲食をしたり、はたまた遊びが生まれたりと、場の過ごし方としてはかなりのバリエーションでしたね。「目線が変わる」という意味では、Palabさんの「Parallel Collage」も普段気に留めていない街の風景が創作のパーツになることで、まさに見方が変わるという体験でした。こちらも、ずっと人が絶えないほどの人気でしたね。
 
Palab:普段は見過ごしていても、ああいった街との出会い方がつくれたら、いろんな可能性が広がりますよね。「これはどこの風景ですか?」といった会話も自然と生まれるので、街や建物を回遊したりするきっかけも生まれそうです。
 
-話題や会話が生まれる環境になっていましたね。渋谷の街を切り取った写真をプリントしたTシャツもかなりの枚数が売れていましたよね。早々に売り切れ続出で、とてもびっくりしました。実施前におっしゃっていた「一つ一つを分解し、再構成しても『らしさ』は残る」という意味も感じられました。らしさって、押し付けられるとなんだか胸焼けしてきますが、ああやって自然と醸し出されるものに心が動くものがあります。
 
Palab:東京在住の方はもちろん、海外の旅行者の方もたくさん体験したり購入したりしてくれましたが、そういう感性でデザインされたお土産って案外少ないのかもしれませんよね。それにやっぱり自分自身でコラージュしたりと、手を動かしていくのも大切なんでしょうね。僕らももちろんデザインをしていますが、参加者の方々も同じようにデザインをする体験になっているというか。
 
-確かに、ただ消費者として買うだけでもない体験ですもんね。その意味でいうと、「Placemaking Kit 」も使う側が、使い手でもありつつ作り手にもなっていくためのKitでしたね。
からだを預けたくなるという気持ちが生まれる
-印象的だったのは、座ってみたくなったり触ってみたくなるという人の感情に自然と訴えかけている様子です。その魅力はどのように解釈したら良いんでしょうね?
 
勝亦丸山:材質としても、ガラスとかコンクリートといった硬い印象がどうしても街の中だと多いですが、これは紙でできているので、質感としても特徴がありますよね。
 
-どことなく優しい雰囲気にはなりますね。座れるかどうかというところと、座りたくなるかどうかって、また別の議論ですよね。座れる場所は確かにあるけど、座りたくなるかどうかは疑問という、屋外空間も多いように思います。
 
勝亦丸山:そうですね。あと、ぱっと見で「自分も作れそう」と思えるかどうかというところも大事なのかもしれません。だから、ちょっと座るだけじゃなくて色々とやってみたくなるという。
 
-そうやって気持ちが動くような環境はどのようなものなのか。それをSSSでは、渋谷川沿いのこのエリアで引き続きじっくり考えながら実践していきたいです。ああ、あと、ストリートファーニチャーを街の往来の中でつくったり、運んだりしている風景もすごい新鮮で、みなさん興味津々の様子でしたね。
 
勝亦丸山:街なかで創るという行為を目にする機会って実はあまりないんですよね。
 
-お子さん連れで参加していたご家族が、「建築家という仕事があるんだよー」ってお話をされていて、街のなかでの教育機会としていいなと感じていました。
偶然を楽しんだり、味方につける
-今回、渋谷川沿いのこのエリアで風を感じるということがテーマでもありましたが、まさに風を受けて飯田さんの作品が心地よい音を奏でていて、気持ち良かったです。
 
飯田:良い風が吹きましたね。風が演奏してくれていました。
 
-ああ、まさに。風も自然ですから、吹いたり吹かなかったりというムラもありますが、それがかえって楽しかったりもしました。くつろぎながら、次の風を待ったりもして。
 
飯田:そういう時間を過ごすことは大切ですよね。いろんな訪れを待つという意味では、海外からの旅行者の方も含めていろんな人が体験をしてくれましたし、たまたま通りかかったミュージシャンが演奏してくれてセッションできたのも良かったです。そういう出会いが起こるのもやっぱり街中でやることの醍醐味ですね。
 
そういう出会いがたくさん起こるのが良い街なような気もします。渋谷ストリームの道案内のサインポールに作品を設置いただくことが叶いましたが、やっぱり何気なく足をとめる方も多くいらっしゃって、街中にこういった「音響彫刻」というんですかね、グッとくる作品がある状態って良いなって思いました。なんなら常設も願ってしまうくらいです。
 
飯田:ちゃんと準備時間を頂けるなら、もっと色々できますよ。
 
-今回は短い準備期間での初めての挑戦でしたが、実現している景色がみたいです。やっぱり実際に色々と現場で試行錯誤してみると、新しい発想や腹落ちが生まれて、次へのインスピレーションが沸きます。その積み重ねをしていけたらすごく素敵です。
 
一同:色々やりましょー!
 
Palab(山野):そういえば、Palabとは別のプロジェクトですが、長野で日本酒の事業にも携わっていて、すごく美味しいので、次はそれでも参加できたら良いかもです。
 
-え!!!嬉しいです。そうやって、いろんな想いや逸品を持ち寄ることで出来上がる取り組みにしていきたいです。
 
 

 

次回のお知らせ

次回のSSSのテーマは、「からだ、くつろぎうららかうれしい」。渋谷川のほとりで、ノンビリ、ウキウキ、ドキドキ。くつろいだり、思わずからだが動いちゃったり、からだをいたわったり。そんな体験がひろがります。開催日時は、2023年7月15日(土)16日(日)。詳細は、こちらのホームページやInstagramにてご案内します。皆さまのお越しを心よりお待ちしております!