SSS interview 角田テルノ、橋詰大地 「わなげぼーぼー」
SSSは、様々な想いが持ち寄られる場所です。そうでありたいために、実行委員会形式での運営がなされています。このSSS interviewでは、キュレーターを始めとする、そのメンバーとの公開雑談といった形での読み物をお届けします。それは、プロジェクトの奥行きをどのように広げていけるか?という試みでもありますし、もし気になるトピックがありましたらSSSの現場にいるメンバーに是非声をかけてもらいたい!という呼びかけでもあります。ロングインタビューではありますが、是非お読みくださいますと嬉しいです。
目次
ケースバイケースな自己とその紹介
熊:一筋縄ではいかない人たちと、一筋縄ではいかないことをやる必要性ということを感じてまして。
テ・タ:なはははは。
熊:で、たぶん、当の本人たちが、自分たちが一筋縄ではいかない存在であるということは思ってなくて、思ってないというか、気にしてないというか。
テ・タ:うはははは。
熊:というのも、ばらばらな活動をしているんだけど、根がまじめだし、何かに対して誠実で、筋が通っているとも言える。
テ・タ:うけけけけ。
熊:なので、そのあたりを自分たち自身でふりかえりつつ考えていくために、このインタビューシリーズをやっているわけですけども、なんか、もう、壮大で終わらない自己紹介という感じになってきています。お二人は自己紹介をしないといけない時ってどうしているんですか?どうせって言うのもアレですけど、まあ、どうせやっぱり、ケースバイケースで使い分けているんですよね。
テ:もうね、いつも自己紹介する前に「今日は」って言ってます。「今日はこういう感じで来てます」って。
熊:あー、なるほど。
テ:でも、熊井さんもそうですよね。
熊:多分、そうなんでしょうね。なんと言うか、首尾一貫して毎日同じ自己であるべしということが前提になり過ぎちゃうと、もはや自己紹介が、「人間です!」みたいなことしかできなくなってくるというところがあって、もちろん自分なりの筋は通っているんだけど、表に出てくる自分は、立場も含めて結構その都度違うから、「今日は」って付けるの真似をしようと思いました。
テ:もう、ぼくら完全に輪投げ屋さんの人として認知されますからね。お客さんに絡まれたりもしちゃったりもして。
タ:そうそうそう。わなげ屋という仕事がスゴい社会的地位の低い職業として扱われたりすると、喧嘩しちゃったりしてるからね。
熊:ああ、「いい歳して、こんな道楽な遊びみたいな仕事をして」みたいなことを言われることもあるんですか。
タ:「もっとちゃんとした仕事しなさい」みたいに説教されることもたまにありますね。大体は、「いやそうなんすよねー」「わなげ、やります?」とか言って返しているんですけど。
熊:もはや、ちゃんとした仕事とはそもそも何か?みたいな深い議論にもなっていきますね。
タ:ついやっぱ、自分の状態によっては熱くなっちゃって、「言っときますけど」とか言って、語っちゃいますね。それで、あとで反省するときもあります。あそこまで熱くなることだったのかって。
熊:そのやりとりそのものに、胸が熱くなります。タイチくん、でも、カメラマンじゃないですか。Liveとかプロレスとか、スゲえ写真たくさん撮っているけど、自分からほとんど言わないですよね。
タ:10年以上ずっと「カメラマンです」ってやってきたんですよ。でも、「ぽいね」って言われるようになってきたら、最初は「俺もついにそういう感じに見られるようになったんだ」って嬉しかったんですけど、あまりにも言われるようになると、「なにがわかるの?」みたいな気持ちになってきて。
熊:そう簡単にわかられてたまるかってね。
タ:そのタイミングでちょうど輪投げを手伝って一緒にやることになって、「輪投げ屋です」って名乗ってみようかなって思ったら、思いの外、反応が面白い。質問されることも話す内容も変わってくるし、それまでと違った会話ができるなって思って、そっちの方で自己紹介してますね。
「SAVE AREA」という所沢にある拠点と、その変化と安定
熊:えっと、言ってしまえば、「わなげぼーぼー」という輪投げ屋さんは、行商というか旅芸人みたいなスタイルで、津々浦々に巡業されてますけど、所沢に本拠地を構えているじゃないですか。「世界食堂」っていう多国籍料理屋さんをやっていたり、最近だとジビエのレストランを開業されていたり、あと、秘密基地みたいな倉庫のような店舗のような謎なスペースも持ってますよね。
テ:うん、うん、うん。「SAVE AREA」ですね。なんかあそこも、いろんな名称を持ってて、一番大きくくくっている名称がSAVE AREA。
熊:名称も気になりつつ、あそこも謎というか不思議な場所で、古着とか古道具とかが大量にあって販売もしつつ、えっとホビー系のやばいスペースもありましたよね。
テ:それは、「WARHAMMER」っていうイギリス生まれのミニチュア・ボードゲームシリーズのやつですね。
熊:ボードゲームとフィギュがが合体したような、スゴい世界観に圧倒されつつ、子どもの塾も建物のなかにあったじゃないですか。
テ:ありました、ありました。
熊:なんなんだここは?ってなって、それにワクワクした記憶があります。
テ:SAVE AREAのなかで、販売機能を持つところは「CVCモール」って呼んでて。
熊:CVC?
テ:クラフトとビンテージとクリエイティブかな。それの頭文字をとって...。あ、コレクティブだっけ?もう忘れちゃいましたね。コレクティブも入れてた気がするな。とにかく、長屋式でみんなで店子さんを集めて委託販売するような販売エリアをそう呼んでましたね。CVCモールの他にも、DJと、ちょっと飲食できるスペースもあって、そこは「スペースフォレスト」って。
熊:おお。
テ:僕、名前つけるの好きなんすよね。
タ:工作室は「亜空間ノイド倶楽部」っていう。
熊:もはや現代詩みたいですけど。3Dプリンターとかレーザーカッターとかの機材が揃っていた場所ですよね。
タ:そうそう。で、まあ、それらの機能のほとんどは、今はないです。
皆:あははははは。
タ:て言うぐらい、もう、スピード感があるというか、なんと言うか。
テ:ですね、刹那的にね。
熊:なんかその刹那的な変化のスピードが高速だとしても、なにかこう、そういう傾向そのものの安定を感じちゃいますわ。なんか、僕が基本教育領域の仕事をしているので、頭のなかで「被抑圧者の教育学」という本を出しているブラジルの教育実践者のパウロ・フレイレっていう人の言葉を思い出しちゃうんですね。
テ:「被抑圧者の教育学」。
熊:サバイバルっていうか、ハードな状況を生き抜くことにおいての教育を考えるみたいなスタンスの話なんですが、フレイレがまさにみたいなことを言ってて。たとえば「人間らしく存在するということは、世界を命名し、それを変えることである。いったん命名されると、世界はふたたび課題として命名者の前に現われ、新たな命名をかれらに求める」とか「対話は世界を命名する人間同士の出合い」とかって、書いているんですよ。
テ:おお。
熊:ねえ。なんかヒップホップとかもそうですけど、自分の人生の手綱をちゃんと持っておきたいというか、自分が生きているということをちゃんと実感に落とすために、自分たちの足元というかローカルを大切にしつつ、新しく名前をつけるという営みはやっぱりサバイバルテクニックとしてある気がするんですよね。それで言うと、妙に印象に残っていたのが、「SAVE AREA」の隣の小学校の行事とのコラボというか寄生というかなんと言うかですが、その小学校の運動会かなんかのときに、お父さんたちの喫煙所みたいなものを敷地につくってあげますっていう。
テ:小学校の校庭で野球の練習をしているときとかですね。貸し出しをしてます、うちらの喫煙所。
熊:ここ広いし、どうぞみたいに。
テ:そうですね。もうSAVE AREAを持って、6年7年とか経つんだと思うんですけど。一番ご長寿コンテンツかもしんないっすね、喫煙所って。
タ:間違いない。
熊:いや、なんか、その話も聞いてスゴい、ハッとさせられたんですよ。自分の頭で考えて行動するって、つまりそういうことだよなって。その発想はなかなか出るもんじゃなくて、きっと、そういう視点が、今めちゃくちゃ重要な気がしているんですよね。
テ:えー、そうですか。
熊:そうですって。
思い立ったが吉日という縁の起こりと、お祭という社会インフラ
熊:「世界食堂」も面白かったなー。あそこも隣が塾だから、普通に受験勉強している子たちが、なんとなくでも「異界」の雰囲気を感じる導線があるっていう。結構スゴいことだと思うんですよね。というか、必要なことだと思うんですよ。
テ:そうっすね。世界食堂も、もう様変わりしてて、SAVE AREAで販売していたミニチュア・ボードゲームのWARHAMMERも、今では世界食堂で売ってて。3Dプリンターとかレーザーカッターとかも、こっちに持ってきています。ご飯も食べることができて、ゲームもできて、ものも作れるって。
熊:それもなんか良いですね。
テ:お店にいるときに、頭によぎるんですよね。違う属性の人同士が出会ったり、参加しやすくなるための仕掛けがもうちょっとあってもよいだろうしって。そんなんで、なんかどんどん様変わりしていってるっていう気はします。
熊:ふと思ったり、思わず考えちゃったりした後に、実際にやってみるというサイクルがクイックなんでしょうね。思いついたが吉日みたいな。
テ:それ、若い頃から口にしてたかもしれない。「思いついたら吉日だから」とかって言っている昔の自分がいた気がします。
熊:いろんな人との出会いもあって、思いついちゃったりして、それで「せっかくだし」とか言って、事を動かしちゃうというか、動いちゃうというか。それで言うと、所澤神明社でお祭というかイベントをやっているじゃないですか。内容が濃くてさらにボリュームがスゴいことになっていますよね。所澤神明社って、場所としても所沢市の産土(うぶすな)の神社ということでスゴいんですが。
テ:「宵の市」ですね。
熊:スゴい規模ですけど、運営母体はどうなっているんですか。
テ:あれは、「無礼講プロジェクト」っていう有志団体なんです。
熊:またいい名前ですねえ。
テ:今年で8回目だったのかな。
熊:8年続いているんですか、スゴいです、あの規模で。
テ:やっぱ、あの祭りから、とてもポジティブな要素がばら撒かれていくようなニュアンスが肌感であって。
熊:ポジティブな要素。
テ:たとえば、今年で言うと、当日がものスゴい大雨で。「なんか、あのときの、そこにいたんだ」みたいなのが共通の思い出というか、伝説のようになる。
熊:ああ。お祭の運営的には、大雨は辛いは辛いけど、それさえもというか、それだからこそ、そこで生まれるものがあると。
テ:そのためにあるわけじゃないですけど、それを通して新しい仕事が生まれたりもしています。
熊:ああ。
テ:もう角を曲がれば知り合いに会うとか、階段を登ったら聞いたことない音楽が流れてるとか。なかなかのインパクトみたいなのがいろんなとこにあって、それを一緒に体験した状態で、後日、話の入口になってくれるみたいなことが起きていたりするんですよね。
熊:うわー、話の入口、うん。それがあることの意味というか価値というものは計り知れないんでしょうね。社会インフラと言ってもいいくらいの。
テ:そうですね。やっぱり何年もやっていると、そわそわしてくるというか、また来るねみたいな。それで、あれやっていきましょう、これやってみましょうみたいな感じで、一緒に向かっていくこととかが、なんか僕には、いいことのような気がしています。
熊:うわー。そういう風物詩を、今、社会が必要としている気もします。SSSも、裏テーマというか、裏でもなんでもないんですけど、「他者と共に事を起こす」ということを大切にしていますけど、それこそが、あたりまえなことではあるんですけど、この社会に失われつつあるような気がしちゃうんですよね。
山の方の民と海の方の民が交わる場所
熊:なんかですね。観光地のお土産とかって、そもそも漢字として「土に産まれる」って書くのに、その土地と全然関係のない産地だったり工場だったりすることが多いから、商品ラベルみてわりといつも萎えてたんですよ。お土産ってなんだよって。で、いま喋りながら気がついたんだけど、産土(うぶすな)もつまりそういうことじゃないですか。で、なにが言いたいかって、このあいだお二人の拠点である所沢をご案内頂いて、その産土を感じたんですよ。「わー、山の方の民だー」って。
皆:なははははは。
熊:それで、SSSのディレクターに途中からなって、一応まじめに考えてきたわけですね。SSSがどうあるべきかって。ただ、もっと突き抜けないといけないと感じていて、つまり渋谷がどうあるべきか、都市がどうあるべきかって、それくらい、そもそものところから考えたいわけです。で、辿り着いた先がいくつかあるんですが、その一つが、「都市って、山の方の民と海の方の民が交わる場所だよな」っていうもので。
皆:ぐはははは。
熊:いささか笑い話ではあるんですけど、かなり真面目に素直に感じちゃったんです。そのインスピレーションをくれたのが、お二人。
テ・タ:えー。
熊:だから、ここ数ヶ月、「所沢軍団」って勝手に呼んでたんですよね。本音は、トライブとか民って呼びたいんだけど、なんか気恥ずかしいから、軍団。でも、企画書にも「トライブの交流」って、大真面目に書いてますからね。それで、自分のことをディレクターっていうか「トーキングチーフ」ですって。
テ・タ:トーキングチーフ。
熊:サモア諸島とかには、村長さんとは別に、村の話し合いを司るリーダーがいるんですよね、それ。「民主主義の非西洋的起源」みたいなことで。
皆:なははははは。
熊:あれですよ、軍団って言っても別に、軍隊というか体育会系な要素を感じているわけでは全くないですからね。だいたい、お二人に管理統率な軍団意識がないですからね。
テ:そういう軍団意識はないですけど、トライブっていうワードは、今回もらった感じがするんですよね。だから、世界食堂の人とか、植物のことをやっている人とか、キャンプを極めている人とか、そういう人をSSSになんで呼びたいのかということを説明しようとしたときに、そのトライブ性を出したいという感じがやっぱりありますね。ドライブっていうのはしっくりくるかも。
熊:いや、もう、ほんとに、渋谷のSSSで、そのトライブ性を出してもらいたいもん。それが都市でしょって、結構ふつうに思っています。ただこういう話って、する機会がないし、SSSの告知に書くものでもないような気がしてて、割と心に秘めてました。
テ:そうですよね。なにかに書いちゃうと、たしかにアレですけど、ロビーで話すようなときには、すごい伝わりやすいニュアンスだと思います。
熊:わ、「ロビーで話すときには伝わる」かあ。なるほどです。なんか、hip-hopで言うところのhood(地元)という感覚なんだと思うんですけど、レペゼンする地元があるという感じで。うまく言えないんですけど、ただ寝て起きる場所ということではなく、ちゃんと自分たちのからだを預けている先との相互作用があるということだと思うんです。そういうこととして、地元をみているという感じ。
その場の響きをチューニングするということ
熊:何回も反芻するようなシーンがSSSには多いんですけど、広場で開催をしたときの綱引きのシーンが、まさにそれで。私物の綱引きのロープを持参していたら、同じくキュレーションで入ってくれているミヤジくんがマイクを持って「綱引きやりましょ〜」って、突発綱引き大会が始まり、僕と子どもたちとの綱引き合戦になったんですよね。そうしたら、ものすごい良いタイミングで、輪投げ屋さんをやってたタイチくんがすすすっと入ってきてくれて、レフリー役をやってくれて、事前の申し合わせは一切なかったけど、なんだかものすごい気持ちが良く楽しい瞬間だったんですよね。
タ:子どもたちと熊井さんの間にレフリーがいた方が面白いじゃないですか。子どもたちがあっさり負けそうだったら、子どもたちの側につけるし。
熊:そうそうそうそう。こちらも本気を出しすぎて、いきなり勝っても微妙だし、かといって手加減しすぎて、子どもたちがあっさり勝っちゃうのも微妙だしっちゅうことで、スゴいいろんなバランスをみんなで感じながら、おもいっきり楽しんでいる感じがね、美しかったです。
タ:やっぱ、そういうバランスがある方が面白いじゃないですか。
熊:そうそうそうそう。その通りだと思っていて、そうなってくると、もはや「輪投げ屋さんって何をする仕事なんですか?」という問いに対して、今日の最初の方の話にあがった、「この世界に新しい名前をつけてます」みたいなことでもあるし、なんなら「この世界のバランスをみてます」「この世界を調律しています」みたいなことでもあるよねってなる。調律って、それぞれの音の鳴りを合わせて調子を整えていい感じにするってことじゃないですか。だから、その場の「鳴り」に超敏感っていうことでもあるし、「新しい名前をつけたら、鳴りと響きがかわりましたね〜」みたいなもんで。
皆:なははははは。
熊:それって、今よく言われている、空気を読むとか読まないとかの話とはなんか違うんですよね。空気を読むべきか読まないべきかという議論では全くなくって。
テ:そういう言葉で言っちゃえば、「こっちの方がなんか全体的にグッドバイブスじゃん」っていうものですよね。そっちの方が自分も居心地がいいと思える。みんながいい空気になってる方が、自分がそこにいたいと思えるし。
タ:僕からすると、テルくんは本当にスゴイなっていつも思うんですけど、コミュニケーションもプロレスで言ったら受け身がめっちゃうまい人なんですよ。なんか名勝負製造マシーンじゃないですけど、僕にはできんなって。いろんな人がいろんな相談をしに来るのもわかるなって思います。僕はもう、「ああ、やらかしちゃった」「ふざけすぎだって」みたいなことが結構ありますけど、でも、まあ、そういうバランスみたいなことは考えますよね。
熊:タイチくんの調律は、「ちょっと自動でビブラートかかるようにしておきました〜」みたいなもんで、その仕上がりが、イタズラ心のある聞いたことのないような旋律になってたりね。でも、調律は調律なんですよね。
世界平和と薬膳料理
熊:それで思うのは、この二人は一体何に忠実でいようとしているんだろうかってことなんですね。活動母体となる会社は一応あるけど、じゃあ、その会社に忠誠心というか、会社に対して誠実でいようとしている感じもあんまりしないんですね。自分のことで言ったら、SSSは東急さんとの協同で成り立っているわけですけど、じゃあ、東急さんに忠実でいたいかというと、必ずしもそういうわけでもなく、むしろより良いパートナーとして、渋谷川とかに対して誠実でいたいんですよね。まあ、丹野さんはヤベえとは思います、いい意味で。
テ:丹野さんはヤバいっすよね。比喩ですけど。火の付け所がある状況っていうのは、やっぱり素晴らしいです。火のつけどころっていうか、もう既にめちゃくちゃ燃えているみたいな。たまに、それがなんにもないこともあるんで。
熊:まさにです。
テ:さっき「世界を調理している」みたいな話の時に、嬉しかったんですけど、普段は言わないことですけど...。
熊:さっきテルくんが言ってた「ロビーでなら話せる話」的な。
テ:はい。本当に普段はわざわざ口に出さない話ですけど、やっぱり最終的には結局、世界平和であるっていうのは、やっぱある。
タ:それは、ある。
熊:うん、実は結構ある。
テ:ありますよねえ。それに忠実なんじゃないですか。
皆:ぬはははははは。
タ:そのためには、近いとこから始めましょうよっていうところで、まずは自分からですけど、目に見える隣の人や近くの人をグッドバイブスにしていきましょうっていうことがあるのかもしれないなとは思います。
熊:輪投げ屋さんの皮をかぶった、花咲かじいさんだな。それか、山の民の隠密活動。
タ・テ:隠密活動。
熊:言葉を変えると、薬膳的というやつで。薬膳料理って、日常的に美味しい美味しいって食べてたら健康になっちゃったみたいなもので、もはや薬って気がついてないみたいな感じもあるじゃないですか。輪投げも、なんか楽しい楽しいってやってたら、なんか全体的にチューニングされちゃったみたいな感じで。それで言うと、テルくん、廃品回収もしてたじゃないですか。古物の仕入れ的な実利もありつつ、「廃品回収ということにしておくと、普段話せない人と話せるし楽しい」みたいなことも言ってましたよね。その話も結構好きなエピソードで。なんというか、世界平和のためにはそういう薬膳的なアプローチしかねーよなっていう気持ちになっているんですよね。
テ:もう慣れちゃいましたけど、たしかに隠密活動ぽいですよね。入れない扉の中に入ると、壁だったものが壁じゃなくなりますからね。
熊:そう。山の民から、そういうサバイバルテクニックを教えてもらってます。
テ:あははは。結構、「なんか笑える」みたいなところで始まっているんですけどね。なんて言うんだろうな、ユーモアなのかな。タイチくんとも、めっちゃその辺の気が合うんだよな。輪投げやっているのも、この角度からだったら、人の気持ちの深いところへの入口に立てるかもなっていうことでやっている気がします。
タ:やっぱ、今までの価値観をちょっと変えたいっていうか、その見方がガチャッと変わるとウケるよねみたいな話はよくするよね。それが実現可能かどうかは次のステップなんですけど、そのための方法をどう採用するかっていう話は結構好きだよね。
テ:うん、そう、「価値観ずらし」みたいな。
熊:おお、プロセスの必殺技みたいです。
暖簾分けと儀式という、古くて新しい方法
熊:「わなげぼーぼー」の景品って、デッドストックのおもちゃがあったり、変な民芸品みたいのがあったり、まあとにかく普通じゃない。その景品の物量も、搬入だけでかなり大変だろっていうもので。で、あの輪投げの体験を、数百円払ってやるわけですけど、その数百円はいったい何との交換なんだ?っていうのが面白くて、なんと言うか資本主義のおける「等価交換」というものからはみ出まくっている。
タ:はみ出てます?
熊:子どもが輪投げで成功したりすると、タイチくん、めちゃくちゃ嬉しそうに歓声あげてますよね。あと、たくさんある景品からじっくり選んでいる時に、見守りつつ、選ばれた時にその景品にまつわる話をしてくれる。なんかそこをひっくるめた体験が面白いんですよね。僕、教育の仕事をしているから、ああやって、自分ができたことや選び抜いたことを、一緒に喜んでもらえるという経験って、結構貴重なことだと思っているんですよ。
タ:やっぱり子どもも大人も、人柄出ますしね。それがめっちゃ面白いんですよね。
熊:その人の素が出せるというか出ちゃうような、空間インスタレーションでさ、もはや。そこでの立ち居振る舞いも含めて、全体を通した一つの作品なんですよね。演劇的でもあるし。
タ:やっぱりあれも僕らのひとつの表現ですからね。
熊:そうそう、そうなんですよね。
テ:そういえば、地元で、マルシェみたいなのが結構やってたりするんですけど、あるところで小学生が店長役として自分のお店をやるみたいなイベントがあったんですよ。それで、どんなのがあるんだろうって見てたら、輪投げ屋が出ると。
熊:おお。
テ:その子どもがやる輪投げ屋の屋号が「わなげばーばー」。
皆:うははははは。
熊:完全に「わなげぼーぼー」インスパイアじゃん。良すぎる。
テ:そういうことが起き始めてます。
熊:なんか輪投げを通して、思わず、遠くまで、そして深くまで行っちゃったって感じがスゴイする。
タ:そうですね。最初僕も客として輪投げをしてたんで、もう自分がやる側に回るなんて思ってもなかったですし、最初からこうなるとは思ってもなかったですけど、なんか最近、使命というか、そういうものを帯びてきたなっていう感じはします。
熊:使命があるというよりも、使命を帯びていくってなんかいいな。すごいオーガニックで。
テ:タイチくんと一緒にやるようになってから、なんか哲学が生まれるというか、それに拍車がかかっていくというのはありますね。1人でやってるときって別に何も考えてないっすから。元々は、子どもが買いたい欲しいって言っても、親が買わないっていうのをどうやってずらして買ってもらえるかってことしか考えてないですもん。でも、ただ輪っかを投げるということの面白さというか深さっていうものが、どんどん出てくる。
熊:良すぎるな。使命や哲学のあり方として、なんかものすごい、どまんなかな気がしてきたんですけど、次のステップってイメージありますか?
テ:いろいろとあるんですけど輪投げだと、タイチくんが言ってたことなんですけど、わなげの「わ」は、へいわの「わ」っていうことで。だから、でっかいしめ縄みたいなので輪っかをつくって、みんなで平和を願って、それを担いで投げていくという。
熊:え、いつか、それやりたいです。
テ:やっちゃいます?
皆:ぬはははははは。